ギター上達コラム

第63回「自分でいいと感じられる」まで!

 

どんな楽器であれ、人前で弾くということは緊張を要するものである。ましてギターは、楽器の中でも難しいとされる楽器だけに聴いている人が思うより遥に緊張度は高い。数センチの幅に6本の弦、1本1本の弦の幅間隔は驚く程狭い。そんな厳しい制限の中で、複雑な指使いを躍らせることの難しさが緊張を余儀なくさせるのだ。難しい楽器であることは百も承知だが、それでもギターが持つ「魅力」には到底敵わない。これまで、後ずさりしたくなる気持ちを振り切り挑戦し続けて今がある。大事なことは、挑戦し続けることだ。

 

演奏者が人前で弾く時に上がるのは当たり前のことで、仕方のない事なのだ。緊張があるからこそ、それに負けまいと必死で努力もするのである。ただ、上達に向けてどんな努力をすればいいのか、知っておくことは大事である。まずは、自分の出している音をよく聴くこと。スタートラインに立つための第一条件だ。日々の練習においては、「音符貯金」や「囲い込み作戦」で、暗譜までの道のりを人それぞれで工夫し今取り組んでいる「楽曲」と腰を据えて向き合っていけばよい。

 

今月は、暗譜以後の練習のやり様について書いてみよう。

若い頃、難曲と言われている曲に次々に挑戦することに喜びを感じていた時期がある。弾けなかった難曲が滑らかに弾けるようになると、もうそれだけで嬉しくなっていたものだ。暗譜ができ、思うように弾けるようになったそのことで成就感が満たされ、そこから先の音楽の面白さに浸る贅沢を味わうことなく次の曲に向かってしまっていたのだ。

長年ギターに携わってきて、曲の面白さは暗譜してからの「深堀スッテップ」にこそあるのだと知ってからは、曲を深く探求していくことの面白さが実感できるようになった。

どのように深堀するのか。

「自分でいいと感じられるまで根気よく諦めずに繰り返しの練習を積み上げていくこと」

である。この方法の難儀なところは、「自分がいいと感じられるまで」と言うところであろう。演奏の基本は、自分の出す音をよく聴くことから始まる。と書いたが、深堀においてもまた、「自分がいいと感じるまで」よく聴く耳が必要なのである。

とりあえずの方法としては、自分の弾いている曲を「録音して聴いてみる」ということをお勧めする。まずは、小さな曲から始めればいい。自分の練習曲を録音して聴いてみると、自分が普段に出している音色や音出しの癖など、意外に多くの情報が詰まっていることに気づくだろう。人がいいと言ってくれても、自分がいいと思わなければ本当の満足はないし、人がだめだと言っても自分がいいと思えば、「ぶれる」必要はない。つまり、あくまでも基準は「自分の感性による」のだから、自分の感性を磨く以外に上達の道はないのである。どの「道」にも、近道というものはない。「ギター上達への道」もまた、「近道」も「終わり」もない果てない道ではあるが、やり続けた者だけが掴む「至福の時間」「喜びの世界」は必ずやってくる。実行あるのみである。

今回は「令和元年最終号」となる。日々の練習を自分なりの工夫で楽しくし、共に学び合えた1年間に心から感謝したい!!

                        2019.12.01 

                         吉本光男